MAGICA・キャラクターによるゲーム紹介
舞台編A
2010.10.7



(薄暗闇の中。ぼんやりとした光の中央に、いくつかの人影がみえる)


(中央にエスティーン。その前に、並ぶようにミル、リリィ、アーウィンが座っている)



「さて…みんな、そろったようだね。始めても、いいかな?」



「いいよー」

「はい」

「はい。…といいたいところですが、その前に。
 前回私、不参加だったから、どのへんまで話したかを聞いておきたいです」



「ん…そうだね」

「最初から、ほとんど最後まで、いなかったわけだしね」



「前回は、この大陸の、現在のかたちと特徴について説明をしたんだ。
 アーウィン。分かったことを、話せるかな?」



「はい…大丈夫です。話しますね」

「おねがいするよ」



「この大陸には、大きく分けて…3つの地域があります。
 ひとつは南側にある郡島地帯の『教国』。もうひとつは、北側の平原地帯の『主国』。
 そして、東側にある山岳地帯が『古国』と呼ばれている地域です」



「うわ、すごい…完璧だよ」

「完璧だねぇ」

「アーウィンすごい!ぱちぱちぱち!」



「ありがとう。
 多分、エスティーンさんと、リリィの教え方が…
 わかりやすかったんだと思う」



「ぱちぱちぱちっと…。
 リリィなんてさ、それを憶えるのに3年かかったんだよ」

「そ、そんなに…?」

「それは、かかりすぎだなぁ」



「ちょおっと、めちゃくちゃいわないでよ!
 そんなの、おそわる前から知ってたよ!」

「そうだったっけ?…まあいいや」

「よくない!」



「ミル。リリィで遊ぶのは、ほどほどにしておこう。
 本来は、君が進行役なんだからね」





(ミル、舌を出して頭をかく)





「おこられた…」



「ざまをみろ!」

「リリィも、言葉づかいがおげれつだよ」



「おげれつ…」



「(確かに、ちょっと下品だったかも…)」

「さあ、ミル。きょうのお題から、はじめてくれるかな?」



「はい。今日は、舞台編の後編ということで…
 私が所属してる、警団についての解説をおこないます」



「警団か。所属してるのは、アーストさんと、ナナさんもだったよね」

「だね。扱いが少し特殊だけど
 リリィも私のパートナーだから、一員ではある。
 アーウィンも、今後は同じ扱いになると思うよ」

「私も所属しているわけではないけど、客員として仕事に参加することが多いね」

「ですね。
 …そういうわけだからさ、アーウィンには少し詳しく
 警団の話をしておきたいんだよね」

「ん…そうだね。僕もいろいろと知っておきたい」

「うんうん」



「…それよりもミル」

「ん?なにかな」

「…おげれつって、どういう意味?」

「………」

「おこられたのはわかるんだけど、意味がわかんない」



「(そこから、わかってなかったんだ…)」





(暗転)





「さて、まずは警団の概要から、説明していくよ」

「うん」

「はーい」

「基本的には、大陸で起こった事件の解決にあたる団体でね。
 各地の物の怪被害とか、犯罪の抑止、鎮圧なんかを目的としてる」



「大陸…」



「いちばん多いのは、多分物の怪退治だよね」

「そうだなぁ。私は完全に実働班だから…。
 諜報部なんかだと、全然雰囲気は違うだろうね」

「ミル、聞いてもいいかな?」

「うん。なにかな?」

「大陸すべてが、活動範囲に入ってるの?」

「そうだね。手の届きにくい地域はあるけど、ほとんど全域になる」

「だとしたら…国のまとまりを超えて活動してるってことだね」



「!」

「ふふ」





(ミルとエスティーン、顔を見合わせる)


(満足そうに微笑むエスティーン)





「まさにそのとおりだよ。警団は、母体というものがない。
 あくまで、さっき言ったように大陸の治安のために活動してる」

「…理念は、そうだね。そんなに簡単なものではないと思うけど」

「はっきり言いますね…。まあ、確かに建前です。
 …リリィ」





(唐突なよびかけ)


(リリィ、振り返る)





「なあに?」

「ちょっと難しい話になりそうなんだけど、いいかな?」



「んー…。じゃあ、ひざをおかりします」

「お貸しします。…ごめんね」

「いいようー」





(リリィ、ミルのひざに頭をのせる)





「アーウィンも。
 話が、ちょっと難しくなるよ。
 分からないところは遠慮なく聞いてくれていいから」

「分かった。そうするよ」

「うん。
 …まあ、さっきも言ったようにさ。警団は基本的に、治安維持のためのみの組織ではある。
 このかたちが出来上がるまでの経緯は、エスティーンさんのほうが多分詳しいかな」

「そうなんだ…」

「実際に、見てきているからね。…人間の、さまざまな事情があったのさ」

「さまざまな事情?」

「国と国の問題、だよ。
 『主国』と『教国』は、明確な区切りがあるわけではないけど。
 住んでいる人間は、いろいろと違っている」

「この大陸に住むようになった、理由が違うってことだよ」

「ん…」

「難しく感じるならば、こう考えてごらん。
 アーウィン、君は家を持って、そこに住んでいる」

「はい…」

「家には庭がある。庭には、君の育てた菜園があることにしよう」

「はい」

「その菜園に、君の知らない人間が
 君の知らないうちに入り込んだり、土を掘り起こしたり…
 育てたものをどこかへ運んでいたりしたら、どう思うかな?」





(うつむくアーウィン。その表情は、どこか辛そうに見える)





「…複雑な気分になると、思います」

「そうだね。そういう気分になることは、しごくまっとうなことだと思う。
 人間の、国と国の問題というものは、それの規模が大きくなったものなんだ」

「今の話は、そのままこの大陸の事情にもつなげられるんだよ。
 菜園を育てていたのは『教国』。そこに入り込んできたのが『主国』になる」

「『主国』が、後になって出来たっていうことだよね」



「…『教国』は、始祖ともいえる人々がいてね」



「始祖って言葉の意味は分かる?アーウィン」

「ん…なんとなく、わかるよ。僕も、『教国』の内部にいたことになるわけだからね。
 多分だけど…『教国』を作った人のことに、なるのかな?」

「うん。それで問題ないよ」

「そうだね。…もう少し、古い話をすれば。
 もともと『教国』は、その始祖の人々の教えを守る人間が集まって、できあがったもの。
 宗教国とでも、いいあらわせばいいのかな」

「はい…それで、わかります」

「ここで、良くなかったことがあったんだ」

「…良くなかったこと、ですか」

「さっきも言いかけたことだけれど。
 始祖ともいえる人々は、ひとりではなく、たくさんいた。
 そして、そのそれぞれの教えが、少しずつ違っていたのさ」

「…少しずつのままだったら、良かったんでしょうけど」

「その少しが、年月を経て…徐々に大きくなっていった。
 それぞれの教えを守る人々が、違った教えを守る人々を、区別しはじめる。
 そして、最後には争いあうようになった。どちらが正しいか、という理由でね」

「その中で、北の平原地帯にできあがったまとまりが『主国』になったんだよ」

「ん…なるほどね」

「他の大陸から入ってきた人も、ほとんどがここに集まった。その影響もあってね。
 かなり昔から、始祖の教えってものも、ほとんど口にされなくなってる」

「…その間『教国』はどうなっていたの?」

「長い長い、争いの最中さ。一度は、大きなまとまりができたこともあったようだけど」

「そのときに台頭した始祖の一派も、今は『主国』内部に取りこまれてるよ。
 『主国』はこの一派を正道派として認めているけど…
 肝心の『教国』内部は、その正道派を蚊帳の外に、今も小競り合いがずっと続いてる」



「………」



「それに比べて『主国』のほうは、比較的落ち着いててね。
 『教国』内部の争いごとの仲介に回ることがあったりもしたんだけど…」

「…それが、『主国』内部の『教国』一派には、たいへん不評なんだ」





(目を伏せるエスティーン)





「『教国』からしてみれば『主国』は別の国だから。
 目的が仲介だったとしても、単に外からの侵略として見てしまう。
 それはまあ、仕方がないことなんだよね」

「うん」

「だけど、事実として、物の怪の被害とか…
 『教国』内部の小競り合いで被害を受ける人は少なからずいる」

「それは、確かにそうだろうね」

「そこで、どの国にも属さない…警団が設立されたってわけだよ」



「…さっきも、言ったことだけれど。
 警団の理念は確かに、大陸の治安維持ではあると思う」

「…はい」

「いくつもの、人間の意識が集まってできている、組織というものがね。
 完全に、ひとつの意識に、集約されて動くということはまず、絶対にないことだ。
 …私たち、森の一族には、ごくあたりまえにできることだけど」

「………」

「そのことは、これまでの経験から…ミルにも、よくわかっているはずだね」

「うんざりするくらいに」



「どういうこと…?」

「ん…まあさ。警団ができるまでは、『主国』の軍隊があちこちで活動をしてたんだよ」

「…そういう話だったよね」

「さっきの話じゃ、はっきりとは言わなかったけどさ。
 『主国』の軍隊には、『教国』を完全に併合してしまおうっていう考え方をしてる人が多いんだ」

「併合…」

「つまりは、完全に侵略目的ってこと」

「『教国』一派の心配どおりにね」

「………」

「さっきエスティーンさんが言ったようにね。
 警団の中にも、その理念を隠れ蓑に、侵略目的で動いてる連中がいる。
 上をたどってみれば『主国』の軍隊の関係者ってことが、ほとんどだけどね」

「そんなことが…」

「もちろん、警団の理念をそのまま実行に移してる人たちもいる。
 軍隊の連中からしてみれば、ただの障害でしかないってことになるんだけど」





(ミルの口から溜息が漏れる)





「…今までさんざん言ってきた、『教国』内部の争いごとだけどさ。
 それと同じことが、『主国』の、私たちがいる警団の中でも、しっかり起こってんだよね」



「(確かに…そうなるのか…)」



「だけどね、ミル」

「ん……はい」



「君は、警団に属することを望んだ。そして、警団に残ることを選んだ」

「………」

「君のそばにいるものたちが、何を望んで、何を選んだのかは、わかるね」



「ん………」

「………」





(アーウィンに目を向ける、ミル。視線が合う)


(アーウィンは、軽くうなずいて見せた)





「…わかります」



「…少し、意地悪だったか。わざわざ、確認することでもなかっただろうね」

「あははぁ…。でも、大丈夫です」





(ミルが、ゆっくり自分の膝に視線を落としていく)





「エスティーンさんが意地悪なのは、まあ今に始まったことじゃないですし」

「おやおや」





(ミルの膝の上)


(リリィがいつのまにか、小さな寝息をたてていた)





「確かに、言われるまでもないことですけどね。
 …この子たちは、私がかならず、守りぬきます」





(エスティーンの髪が、周囲の草木が、さらさらとなびく)


(薄い光をはなっていたそれらが、ひときわ強く、かがやいた)





「んんん…?」



「ありゃ」

「おっと…。起こしてしまったか」



「なんだか、まぶしかった…」

「ま、起きちゃったものはしょうがないかな。おはよう、リリィ」

「おはよう」

「おはようー。…難しい話は、おわった?」

「終わった終わった」

「そうだね」






(満面の笑顔になるリリィ)





「そっか。それじゃあね!」

「また起き抜けだってのに、元気いいなぁ。どうしたの」

「ミルのあだ名は、すごいのがいっぱいあるからいいんだけどね!
 エスティーンのあだ名だけど、寝てるうちに、いいのが思いついたんだよ!」



「(まだ引っ張ってたんだ…。というより…何か、嫌な予感がする)」



「………」

「…すごくて、しかもいっぱいあるんだ。私のあだ名」



「(やばい…これはやばい…)」



「発表します!エスティーンのあだ名は」

「ま、待って待って!僕のはないの!?あったら、それから聞きたいよ!」

「ないよ!」

「ないの!?」



「だから発表します!エスティーンのあだ名は『根っこ先生』!」





(辺りが、水を打ったように静まる)





「どうかな?可愛くていいでしょ」



「(ああ…)」



「…もう、ばっちりですよね」

「ばっちりですね」



「ばっちりだった!?」



「ばっちりですよ」

「ばっちりです」



「ようし!それじゃあ、エスティーンのことはこれから『根っ」



「ミル」

「はいな」

「やっちまえ」

「戦闘開始ーってやつですね!!」

「(ああああ…)」





(アーウィン、耳を塞いで、目を閉じる)


(そこまでしてもなお、ごりごりという音が聴こえてくる)


(同時に、リリィの泣き声とも、笑い声ともつかない悲鳴も聴こえてくる)










(次回が、ラストになります)